「自分たちで作った米を持って土井さんのところに行ったのは、居酒屋で飲んだ『開運』がとてもうまかったから。」田中氏はシンプルにそう語ります。
ヨーロッパやロシア、アメリカなど、世界中にその舞踊のファンがいる田中氏。最近では山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』、犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』に出演。いずれも彼にしかできない演技と存在感が認められ、『たそがれ清兵衛』では、映画初主演にして最優秀助演男優賞を受賞。 |
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「ここでも桜のシーズンに何度か踊ってもらったよ。お礼は『開運』6本だったかな…」前衛といわれる田中氏の踊りを、土井氏、波瀬氏は何度か見ています…が「よくはわからなかった」と言います。
「それでいいんです。僕の踊りは見た人がそれぞれに感じてくれればいい。わからない、ってのも、感想のひとつ。間違いなんてないんです。」考え方の柔らかい田中氏。
やもすれば頑なで形式的になりすぎな芸術の分野に身を起きながら、自分がいいと思ったものはどんどん取り入れる柔軟さ。そして、それは、土井さんも同じでした。
「歴史あるものが正しい」と思われがちな酒造りに、「いい」と判断したものは、新しくても試し、導入していく。例えば、貯蔵蔵に取りつけたソーラー発電パネル、大掛かりな排水処理施設……自然環境を守るために、ここまでの設備投資している酒蔵はそうはないと言われます。
実は土井氏と田中氏はどこか似たところがあって、それこそが気があう一番の理由なのでしょう。 |
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田中氏は舞踊家以外にもうひとつ肩書きがあります。畑を耕し、動物を飼い、自給自足で生活する農民です。
山梨県の甲府盆地に、過疎で人が手入れをしなくなった田畑や朽ちた空き家を借り、舞踊や農業を学ぶ若者たちと移り住んで20年ほどになります。
「『自分たちで作ったものはおいしい』それは農業も酒づくりも同じことです。」と田中氏は語ります。 |
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土井氏と波瀬氏の出会いが日本酒の歴史を変え、二人と田中氏の出会いが力強くうまい日本酒を誕生させました。
高天神城址の湧き水と、静岡酵母HD-1、それに静岡産山田錦でつくられた酒こそが『熊鯨』、名付け親は田中氏。
山の神である熊と、海の神である鯨に捧げたい、そんな気持ちが込められた名前です。
口に含むと華やかな花の香りがする、が、次の瞬間、どんと重くなり、体いっぱいに酒のうまみが広がる。少し驚いていると、あっという間に、重みが抜けて、さわやかな味わいに変わる。こんな酒、飲んだことがない。
土井氏のこだわり、波瀬氏の技術、田中氏の愛情があったからこそ、この世に生まれた酒なのでしょう。 |
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